SAP HANA Cloud

SAP HANA Cloud移行の手順と計画|Self-Service Migration Tool・エクスポート・レプリケーションを解説

SAP HANA Cloudへの移行手順を、事前評価、方式選定、接続準備、データ移行、検証、切り替え、運用までの流れに沿って解説します。SAP HANA Cloud CentralとSAP HANAデータベース・エクスプローラーを使った実務上の確認ポイントも紹介します。

SAP HANA Cloud移行のプロセス事前評価から運用開始までの主要な段階を示すSAP HANA Cloud移行のプロセス事前評価から運用開始までの主要な段階を示す要件選定方式準備完了検証済み事前評価システム、データ、連携、許…移行方式Self-ServiceMigration To…移行先準備インスタンス、ネットワーク…移行と検証データを移行し、アプリケ…切り替えと運接続を切り替え、監視と復…CertPas オリジナル図解
事前評価、移行方式の選定、移行先準備、移行と検証、切り替えと運用の順に進むSAP HANA Cloud移行プロセス
目次
  1. SAP HANA Cloud移行の全体像
  2. 移行前のアセスメント
  3. SAP HANA Cloudの移行方式
  4. 移行先の準備
  5. 移行の実行手順
  6. 移行後の検証と運用
  7. 移行を成功させるチェックリスト

SAP HANA Cloud移行の全体像

SAP HANA Cloudへの移行は、既存環境の棚卸し、移行方式の選定、接続と権限の準備、データ移行、検証、切り替え、運用開始という順序で進めます。単にデータをコピーする作業ではなく、データベースの互換性、アプリケーション接続、ユーザー管理、ジョブ、バックアップ方針までを一つの計画にまとめることが重要です。

移行先は、SAP HANA Cloud Centralでインスタンスを用意し、日常的なデータベース操作やSQL実行はSAP HANAデータベース・エクスプローラーで行います。インスタンス、サービスプラン、容量を前提に設計し、必要な性能とコストを確認します。SAP HANA Cloudにエディションという分類はないため、ワークロードに合った容量とサービスプランを選定します。

全体の流れは次のとおりです。

  1. 現行システムとデータを調査する
  2. 移行対象と対象外を決める
  3. Self-Service Migration Tool、エクスポートとインポート、レプリケーションから方式を選ぶ
  4. SAP HANA Cloudインスタンス、ネットワーク、ユーザー、権限を準備する
  5. データとデータベースオブジェクトを移行する
  6. SQL、アプリケーション、性能、権限を検証する
  7. 切り替えと初期運用を実施する
SAP HANA Cloud移行方式の選び方主な3つの移行経路を停止時間と用途で比較するSAP HANA Cloud移行方式の選び方主な3つの移行経路を停止時間と用途で比較する代替候補代替候補Self-Service Migration…ソース環境の前提条件と対…エクスポートとインポート計画停止が可能で、対象を…レプリケーション切り替え時間を短縮し、継…CertPas オリジナル図解
SAP HANA Cloudの移行方式であるSelf-Service Migration Tool、エクスポートとインポート、レプリケーションの比較

移行前のアセスメント

最初に、現在のSAP HANAのバージョン、データ量、テーブル構成、ビュー、プロシージャ、関数、シノニム、ロール、ユーザー、外部接続を一覧化します。特に、OS上のファイルを直接参照する処理、外部ライブラリ、固定IP、手動スクリプトなどは、クラウド環境で同じように動かせるとは限りません。

業務停止が許容される時間も確認します。停止時間に余裕がある場合はエクスポートとインポートが扱いやすく、停止時間を抑えたい場合はレプリケーションを検討しやすくなります。既存環境の構成や対象バージョンがSelf-Service Migration Toolの前提条件に合う場合は、ツールを中心に計画します。

アプリケーション側では、接続先、ポート、TLS証明書、接続プール、タイムアウト、バッチの実行先を確認します。認証方式や技術ユーザーの扱いも先に決めておくと、移行後の接続障害を減らせます。データベースだけでなく、周辺のETL、帳票、監視、ジョブスケジューラーも対象に含めます。

移行検証と切り替え確認切り替え前にデータとアプリケーションを検証する判断の流れを示す移行検証と切り替え確認切り替え前にデータとアプリケーションを検証する判断の流れを示す整合性確認済み合格問題あり問題あり再検証データ整合性確認件数、集計値、NULL、日時…アプリケーションテストログイン、検索、更新、帳…切り替え準備完了重要確認が完了し、切り戻…是正して再検問題を是正し、影響を記録し…CertPas オリジナル図解
SAP HANA Cloud移行で、データ整合性とアプリケーションを確認し、問題があれば是正と再検証を行い、合格後に切り替える流れ

SAP HANA Cloudの移行方式

Self-Service Migration Tool

Self-Service Migration Toolは、対応するSAP HANA環境からSAP HANA Cloudへの移行を支援する方式です。事前チェック、接続準備、移行対象の確認、実行後の検証という手順を計画に組み込みます。ツールの利用可否は、ソース環境の構成、バージョン、ネットワーク、権限などの前提条件を確認して判断します。

この方式では、移行前にチェック結果を確認し、警告やエラーを解消してから本番移行へ進みます。開発環境や検証環境で一度実行し、所要時間、ログ、アプリケーションの互換性を把握しておくと、本番時の判断がしやすくなります。

エクスポートとインポート

エクスポートとインポートは、データやデータベースオブジェクトを移行先へ取り込む方法です。対象を細かく選べる一方、スキーマ、ユーザー、ロール、依存関係、文字コード、LOBデータなどを個別に確認する必要があります。

停止時間を確保できるシステムや、移行対象を整理して再構成したいケースに向いています。移行後は件数だけでなく、主キー、NULL、集計結果、日付・時刻、権限、アプリケーションの画面や帳票まで検証します。

レプリケーション

レプリケーションは、稼働中のソース環境から移行先へデータを継続的に反映し、切り替え時点の差分を小さくする考え方です。初回ロード、変更データの反映、遅延監視、切り替え手順、切り戻し判断をあらかじめ定義します。

レプリケーションを使う場合は、対象テーブル、DDL変更、トランザクション整合性、ネットワーク帯域、障害時の再同期方法を確認します。切り替え前には書き込みを停止する時刻や、最終差分の確認方法を関係者と合意しておきます。

なお、オンプレミスのSAP HANAバックアップをSAP HANA Cloudインスタンスへ復元する方法は、移行経路として扱えません。SAP HANA Cloudのバックアップとリカバリは、サービス管理の仕組みとしてインスタンス内で計画します。移行とバックアップを混同せず、移行方式はSelf-Service Migration Tool、エクスポートとインポート、レプリケーションから選定します。

移行先の準備

SAP HANA Cloud Centralでインスタンスを作成する前に、リージョン、サービスプラン、容量、可用性要件、ネットワーク経路を決めます。開発、検証、本番で必要な容量が異なる場合は、環境ごとの利用量と増加率を見積もります。初期容量だけでなく、データ増加、同時実行数、バックアップや運用作業の影響も考慮します。

インスタンス作成後は、接続情報、許可されたネットワーク、証明書、認証、管理者ユーザーを確認します。管理者アカウントをアプリケーションから直接使わず、用途ごとに技術ユーザーと権限を分けることが基本です。移行用ユーザーにも必要最小限の権限を付与し、作業終了後に不要な権限を削除します。

SQLの実行、スキーマ確認、ユーザーとロールの確認には、SAP HANAデータベース・エクスプローラーの使い方を利用します。SAP HANA Cloud Centralはインスタンスの作成や状態確認に使い、データベース・エクスプローラーはデータベース内部の確認に使うという役割分担を明確にします。

既存環境とクラウド環境の違いを整理する際は、SAP HANA Cloudとの比較ガイドも確認します。管理責任、ネットワーク、容量、バックアップ、アップデートの扱いが異なるため、従来の運用手順をそのまま移すのではなく、クラウド向けに見直します。

移行の実行手順

1. 検証環境でリハーサルする

本番移行の前に、代表的なテーブル、最大サイズのテーブル、更新頻度の高いテーブル、重要なビューやプロシージャを含めたリハーサルを実施します。時間を測定し、ログの確認箇所、エラー発生時の対応、必要な再実行手順を記録します。

2. 移行対象を確定する

対象スキーマ、オブジェクト、データ、ユーザー、ロール、接続先を確定し、対象外の一覧も作成します。移行後に再作成するオブジェクトや、アプリケーション側で変更する接続設定を別の作業項目として管理します。

3. データを移行する

選定した方式に従って、初回ロードまたはエクスポートとインポートを実施します。実行中は、転送量、処理時間、エラー、レプリケーション遅延、ソースとターゲットの状態を記録します。大規模な移行では、業務時間帯への影響とネットワーク帯域の使用状況も監視します。

4. 差分と整合性を確認する

レプリケーションを使う場合は、切り替え前に遅延が許容範囲内であることを確認します。エクスポートとインポートの場合は、移行元と移行先の件数、ハッシュや集計値、最大・最小日時などを比較します。件数が一致していても、NULL、重複、文字列の切り詰め、時刻の変換を見落とさないようにします。

5. アプリケーションを接続する

テスト用の接続先をSAP HANA Cloudへ切り替え、ログイン、検索、登録、更新、削除、帳票、バッチ、外部連携を確認します。性能試験では、代表的なSQLの応答時間だけでなく、同時実行時の負荷、ロック、接続プール、タイムアウトも確認します。

6. 本番切り替えを行う

切り替え時刻、利用者への告知、書き込み停止、最終同期、接続先変更、動作確認、障害時の判断者をチェックリスト化します。切り替え後は短時間で正常性を判定できるよう、重要な業務シナリオと確認担当を定めます。

移行後の検証と運用

移行後の検証は、データが存在することの確認だけでは不十分です。業務シナリオ、SQL結果、権限、バッチ、外部接続、性能、監査要件を確認し、結果を記録します。問題が見つかった場合は、影響範囲、暫定対応、恒久対応、再発防止策をチケット化します。

運用開始後は、容量、メモリ、CPU、ディスク、接続数、長時間SQL、失敗ジョブ、レプリケーション関連の状態を継続的に確認します。アラートのしきい値は、開発環境の値をそのまま本番へ適用せず、通常時の実績を基に調整します。

運用監視の設計では、SAP HANA Cloudのアラート設定を参照し、通知先、重大度、一次対応、エスカレーションを決めます。日常のインスタンス操作や開始・停止の手順は、SAP HANA Cloudのプロビジョニングと合わせて標準化すると、担当者によるばらつきを抑えられます。

バックアップと復旧については、移行完了後のSAP HANA Cloudインスタンスを対象に運用手順を定義します。保持期間、復旧を依頼する手順、復旧後の検証、業務再開の判断基準を整理する際は、SAP HANA Cloudのバックアップとリカバリも確認します。

移行を成功させるチェックリスト

  • 現行のバージョン、データ量、オブジェクト、接続、ジョブを棚卸しした
  • 移行方式と選定理由を文書化した
  • 移行元と移行先のネットワークおよび認証を確認した
  • SAP HANA Cloud Centralでインスタンス、サービスプラン、容量を確認した
  • 移行用ユーザーとアプリケーション用ユーザーを分離した
  • 検証環境でリハーサルを実施し、所要時間を測定した
  • 件数、集計値、NULL、日時、権限、業務シナリオを検証した
  • 切り替え、切り戻し、障害時の連絡先を決めた
  • 移行後の監視、アラート、バックアップとリカバリを運用手順に反映した

SAP HANA Cloud移行の成否は、データ移行の技術だけでなく、事前調査、方式選定、アプリケーション検証、運用設計をどれだけ一貫させられるかで決まります。小規模なリハーサルから始め、測定結果を本番計画へ反映することで、切り替え時の不確実性を抑えられます。

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