SAP HANA Installation

SAP HANAアップデート手順:計画から検証までの実践ガイド

SAP HANAオンプレミスのアップデート手順を、リビジョン戦略、事前確認、バックアップ、hdblcm実行、テナント検証、事後確認の順に解説します。

SAP HANAオンプレミスのアップデート工程計画からアップデート後の検証までの主要工程を示すSAP HANAオンプレミスのアップデート工程計画からアップデート後の検証までの主要工程を示す承認済みの範囲準備済み環境更新完了リビジョン計互換性、サポート状況、停止…保護と準備バックアップ、ルートキー、…hdblcmで実行hdblcmまたはhdblcmguiで計…システムとテナントを検証サービス、データベース、ア…CertPas オリジナル図解
SAP HANAオンプレミスの更新工程を示す図。リビジョン計画、環境の保護と準備、hdblcmによる実行、システムとテナントの検証の順に進む
目次
  1. SAP HANAアップデートの全体像
  2. リビジョン戦略を決める
  3. アップデート前の環境確認
  4. バックアップと復旧計画
  5. インストールメディアと権限の準備
  6. hdblcmでアップデートを実行する
  7. テナントデータベースの確認
  8. アップデート後の検証
  9. 作業記録と運用への引き継ぎ

SAP HANAオンプレミスのアップデートは、ソフトウェアを適用する作業だけではありません。対象リビジョンの選定、停止時間の調整、バックアップ、互換性確認、実行後の検証までを一つの変更計画として扱うことが重要です。本記事では、SAP HANA 2.0のマルチテナント構成を前提に、実務で使いやすいアップデート手順を整理します。

SAP HANAアップデートの全体像

SAP HANA 2.0は、システムデータベースとテナントデータベースで構成されるマルチテナントシステムです。アップデートでは、データベースだけでなく、ホスト上のサービス、追加コンポーネント、クライアントソフトウェアとの関係も確認します。

一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 現行環境と対象リビジョンを確認する
  2. 変更影響、停止時間、ロールバック方針を決める
  3. バックアップと復旧可能性を確認する
  4. インストールメディアと権限を準備する
  5. hdblcm または hdblcmgui でアップデートを実行する
  6. サービス、データベース、アプリケーションを検証する

新規構築を含む環境では、先にSAP HANAインストール手順を確認すると、インストールとアップデートの作業範囲を分けて計画できます。

アップデート実行ツールの選択コマンドラインのライフサイクル管理ツールとGUIフロントエンドの使い分けを示すアップデート実行ツールの選択コマンドラインのライフサイクル管理ツールとGUIフロントエンドの使い分けを示す実行方法の選択hdblcmスクリプト化や標準化した…hdblcmgui対話的な実行と確認に適し…CertPas オリジナル図解
SAP HANAオンプレミスのアップデートにおけるhdblcmとhdblcmguiの比較

リビジョン戦略を決める

対象リビジョンは、単に最新の番号だけで決めません。利用中のアプリケーション、SAPノート、接続クライアント、バックアップ製品、監視製品、運用手順との整合性を確認します。特に業務システムでは、開発・検証・本番の順に適用し、各環境で動作結果を記録します。

検討時には、次の情報を一覧化します。

  • 現在のSAP HANAバージョンとリビジョン
  • 対象となるSAP HANA Serverのインストールメディア
  • 対応するSAP HANAクライアントやJDBCドライバー
  • SAP NetWeaver、SAP S/4HANA、BIツールなどの接続先
  • 適用対象のSAPノートと既知の制限事項
  • 必要な停止時間、担当者、承認経路

リビジョンの候補を比較するときは、機能追加だけでなく、サポート期間、障害修正、導入実績、運用チームの習熟度も評価します。短期間で複数回の更新を繰り返すより、検証可能なリビジョン戦略を定めて変更単位を明確にする方が、監査と障害対応にも適しています。

アップデート後の検証フローサービス、データベース、バックアップ、業務検証の順に管理者を導くアップデート後の検証フローサービス、データベース、バックアップ、業務検証の順に管理者を導く次に次に次にサービス稼働必要なサービスの稼働を確…データベース接続システムデータベースと全…バックアップ継続更新後のデータとログのバ…業務検証代表的な業務処理とインタ…CertPas オリジナル図解
SAP HANAアップデート後のトラブルシューティングフロー。サービス、データベース接続、バックアップ継続、代表的な業務処理を順に確認する

アップデート前の環境確認

まず、SAP HANA cockpitまたはSAP HANA database explorerで、システムの稼働状態、サービス、データベース、アラートを確認します。SAP HANA cockpitでは、システムの状態やアラート、バックアップ状況をまとめて確認しやすくなります。SAP HANA database explorerでは、システムデータベースとテナントデータベースへの接続状態やSQLベースの確認を行えます。

次の項目を変更記録に残します。

  • システムID、インスタンス番号、ホスト名
  • システムデータベースと各テナントデータベースの状態
  • 稼働中のサービスと重要なアラート
  • ファイルシステムの空き容量
  • OSユーザー、<sid>adm の利用可否
  • 監視、バックアップ、ジョブ、外部接続の稼働状態

インスタンス番号やホストを使った運用操作を確認する場合は、SAP HANAの起動・停止手順も参照できます。アップデート前のベースラインを取得しておくと、完了後に性能やサービス状態を比較できます。

バックアップと復旧計画

アップデート前には、データバックアップ、ログバックアップ、設定情報、必要な暗号化ルートキーの保護状態を確認します。バックアップが正常終了したという表示だけでなく、保存先、保持期間、復旧に必要な認証情報、復旧テストの結果まで確認します。

バックアップ暗号化を使用している場合は、ルートキーを必ずバックアップし、キーを変更した後にも再度バックアップします。変更後のバックアップ暗号化ルートキーがバックアップされていない状態では、そのバックアップを復旧できません。この点は、アップデート計画の中で明示的に担当者と確認します。

データボリューム暗号化、ログボリューム暗号化、バックアップ暗号化は、それぞれ個別に設定されます。暗号化を利用する環境では、どのキーがどの用途に対応するかを記録し、保管場所へのアクセス権限も確認します。

復旧計画には、アップデートが予定どおり完了しない場合の判断基準を含めます。たとえば、サービス起動、データベース接続、バックアップ、アプリケーション接続のどの状態をもって継続または復旧開始とするかを、作業前に合意します。

インストールメディアと権限の準備

SAP HANA Serverの対象メディアを、実行ホストまたは計画した共有場所に準備します。ダウンロードしたファイルの完全性、使用するSAP HANAコンポーネント、適用対象のホストを確認します。分散システムでは、各ホストへの到達性と、必要なOSユーザーの権限も事前に確認します。

コマンドラインのライフサイクル管理にはhdblcmを使用します。グラフィカルフロントエンドはhdblcmguiです。両者を使い分けることで、標準化されたコマンド実行と対話型の確認を選択できます。パラメータ、ログの保存先、実行ユーザー、作業ディレクトリは変更記録に残します。

SAP HANA cockpitを導入する場合は、SAP HANA cockpitパッケージの内部からhdblcmを実行します。導入または更新の対象がSAP HANA Serverなのか、SAP HANA cockpitなのかを作業票で明確にし、異なるコンポーネントの手順を混在させないことが大切です。詳細はSAP HANA cockpitのインストールで確認できます。

hdblcmでアップデートを実行する

作業時間帯に入り、接続アプリケーション、バッチ、監視ジョブ、バックアップジョブを計画に沿って停止または抑制します。その後、対象システムの状態と直前バックアップを確認し、アップデートを開始します。

hdblcmでは、対象コンポーネント、インストールメディア、インストール先、管理ユーザーの認証情報などを確認しながら処理を進めます。入力内容は、対象システム、ホスト、インスタンス番号、適用するメディアと一致していることを確認します。ログは後日の監査や障害分析に使用できるよう、安全な場所へ保存します。

hdblcmguiを利用する場合も、画面に表示される対象、コンポーネント、事前チェックの結果を記録します。GUI操作では、選択したホストや対象コンポーネントを見落としやすいため、実行前の確認画面を変更記録に添付すると有効です。

処理中は、サービス停止、ファイル更新、データベース起動、コンポーネント検証の進行を監視します。エラーが発生した場合は、ログ、エラーコード、発生時刻、直前の処理を保存し、独断で再実行せず、定めた判断基準に従います。

テナントデータベースの確認

アップデート後は、システムデータベースだけでなく、すべてのテナントデータベースを確認します。M_DATABASESでテナントの一覧と状態を確認し、各テナントへ接続して、業務ユーザー、アプリケーション接続、ジョブ、バックアップの状態を検証します。

特定のテナントだけを起動または停止する運用操作では、システムデータベース上でALTER SYSTEM START DATABASE <name>またはALTER SYSTEM STOP DATABASE <name>を使用します。SAP HANA全体を扱うHDBスクリプトやsapcontrolは、個別テナントの操作ではなく、システム全体の起動・停止に使用します。

SAP HANA 2.0のマルチテナント構成では、システムデータベースとテナントデータベースの状態を分けて記録します。テナント数が多い環境では、接続確認表を作成し、テナント名、接続先、代表的な業務処理、確認結果、確認者を一覧化すると漏れを抑えられます。

アップデート後の検証

検証は、ソフトウェアのバージョン確認だけで終了させません。次の順序で、基盤から業務まで段階的に確認します。

  1. すべての必要なサービスが稼働している
  2. システムデータベースとテナントデータベースへ接続できる
  3. 重大なアラートが発生していない
  4. データバックアップとログバックアップが継続している
  5. 監視、ジョブ、外部インターフェースが正常に動作する
  6. 代表的な照会、登録、更新、帳票処理を実行できる
  7. 性能、メモリ、ディスク使用量が許容範囲にある

アップデート前後で、接続時間、代表SQLの実行時間、バッチ所要時間、エラー件数を比較します。列ストアの利用状況を確認する場合は、M_CS_TABLESMEMORY_SIZE_IN_TOTALRECORD_COUNTを使って、主要テーブルのメモリ使用量とレコード数を確認できます。

性能問題が疑われる場合は、変更前のベースラインと比較し、アラート、トレース、SQL実行状況を調べます。アップデート直後の一時的な処理と、継続的な性能劣化を分けて判断することが重要です。

作業記録と運用への引き継ぎ

作業完了後は、実行日時、担当者、対象ホスト、対象コンポーネント、使用メディア、実行ログ、バックアップ結果、検証結果を変更記録へまとめます。未解決の警告や監視上の注意点があれば、担当チーム、期限、暫定対応を明記します。

運用手順書には、更新後のバージョン確認方法、起動停止の担当範囲、テナント確認手順、バックアップ確認、障害時の連絡先を反映します。次回の更新で同じ調査を繰り返さないよう、所要時間と発生した問題も記録します。

SAP HANAアップデートは、メディアを適用する一回の作業ではなく、計画、保護、実行、検証、引き継ぎからなる変更管理です。環境ごとの検証結果を蓄積し、再現可能な更新プロセスとして整備すると、停止時間と運用リスクを抑えやすくなります。

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