SAP HANA Cloud
SAP HANA Cloud Centralの使い方:インスタンス管理と監視の基本
SAP HANA Cloud Centralを使って、インスタンスの作成、起動と停止、監視、権限管理、SAP HANA database explorerとの使い分けを確認します。
SAP HANA Cloudを使い始めるとき、最初に理解したいのがSAP HANA Cloud Centralです。SAP Business Technology Platformのサブアカウントからサービスに移動し、データベースインスタンスの状態や接続情報、運用機能を確認できます。SQLの実行場所ではなく、サービス全体の入口として捉えると役割を整理しやすくなります。
この記事では、SAP HANA Cloud Centralの基本的な使い方を、インスタンスの選択、状態確認、起動と停止、監視、管理ツールとの使い分けという順番で説明します。画面の細かな表示は契約しているサービスプランや権限によって異なる場合があります。
SAP HANA Cloud Centralの役割
SAP HANA Cloud Centralは、SAP HANA Cloudのデータベースインスタンスを管理するためのWebベースの管理入口です。インスタンスの一覧から対象を選び、現在の状態、リージョン、サービスプラン、容量、接続関連の情報などを確認します。
ここで重要なのは、SAP HANA Cloudが「エディション」を選ぶ製品ではないという点です。容量や性能の検討では、インスタンス、サービスプラン、割り当てるキャパシティを組み合わせて考えます。環境を作成するときは、必要なメモリ、ストレージ、可用性、ネットワーク接続、想定ワークロードを先に整理しておくと、後からの見直しを減らせます。
初回アクセスでは、BTPサブアカウント、対象のリージョン、サービスへの権限を確認します。対象インスタンスが一覧に表示されない場合は、ログイン先のグローバルアカウントやサブアカウントが正しいか、また割り当てられたロールやコレクションに不足がないかを確認します。
インスタンスを確認する手順
基本的な操作は、次の流れで進めます。
- SAP BTPコックピットで対象のサブアカウントを開きます。
- SAP HANA Cloud Centralに移動します。
- インスタンスの一覧から対象のデータベースを選択します。
- ステータス、リージョン、サービスプラン、容量、接続情報を確認します。
- 必要な管理操作を選択し、確認画面の内容を読んで実行します。
インスタンス名だけで判断せず、開発、検証、本番などの用途、リージョン、作成日時、接続先アプリケーションを照合してください。似た名前のインスタンスを操作すると、停止や設定変更の対象を誤る可能性があります。
接続情報を確認するときは、ホスト名やポートだけでなく、接続に必要な証明書、暗号化、許可されたネットワーク経路も確認します。資格情報をブラウザーのメモやチャットにそのまま残すのではなく、組織で承認された安全な保管方法を使うことが大切です。
インスタンスの作成方法や初期設定を先に確認したい場合は、SAP HANA Cloudのプロビジョニング手順も参照できます。
起動と停止の使い方
開発環境や検証環境では、利用しない時間帯にインスタンスを停止し、必要なときに再開する運用を検討できます。対象インスタンスの状態を確認してから、停止または開始の操作を選択し、影響範囲を確認して実行します。
停止前には、実行中のジョブ、接続中のアプリケーション、バッチ処理、未完了の更新処理がないかを確認してください。停止すると接続中の処理に影響するため、利用者へ事前に通知し、必要に応じてアプリケーション側の接続停止や再接続も準備します。
開始後は、単にステータスが稼働中になったことだけで完了とせず、アプリケーションからの接続、SQL実行、スケジュールジョブ、監視通知を確認します。停止と開始の運用ルールを決める場合は、SAP HANA Cloudの起動と停止で確認項目を整理できます。
本番環境では、停止による業務影響が大きくなるため、担当者の承認、変更記録、メンテナンス時間、復旧確認を含む手順にします。自動化する場合も、対象インスタンスを識別する条件と、失敗時の通知先を明確にしてください。
容量とサービスプランを確認する
SAP HANA Cloudのサイズを検討するときは、データ量だけでなく、同時利用者数、SQLの複雑さ、ロードやバックアップの時間、ピーク時のメモリ使用量を確認します。現在の使用量と将来の増加量を分けて記録すると、短期的な負荷と長期的なキャパシティ計画を混同しにくくなります。
読み取り負荷の高いワークロードでは、要件に応じて追加の計算リソースを検討できます。ただし、SAP HANA Cloudのelastic compute nodeは読み取り集約型のワークロード向けで、書き込みを受け付けません。したがって、書き込みスループットを増やす方法として説明することはできず、書き込み性能の課題はデータモデル、SQL、メインインスタンスのキャパシティなど別の観点から分析します。
サイズ変更の前には、現在の消費量、許容停止時間、料金への影響、アプリケーションの接続挙動を確認します。サイズ変更後は、代表的なSQL、データロード、アプリケーション処理を同じ条件で比較し、期待した改善が得られたかを記録します。
監視とアラートを確認する
SAP HANA Cloud Centralでは、インスタンスの状態や利用状況を確認し、異常の兆候を早期に把握します。監視では、メモリ、ストレージ、CPU、接続数、SQLの応答時間、長時間実行される処理などを、業務上の重要度と結び付けて見ます。
単一のメトリクスだけで障害を判断するのではなく、発生時刻、直前の変更、負荷の種類、影響を受けたアプリケーションを合わせて確認します。たとえばメモリ使用率の上昇が、データロード、SQLの実行計画変更、利用者数の増加、または一時的な処理によるものかを切り分けます。
アラートは、通知先、重大度、評価期間、対応担当者、エスカレーション先を決めてから設定します。通知を増やしすぎると重要な警告が埋もれるため、業務影響と対応時間を基準にしきい値を調整します。具体的な通知設計はSAP HANA Cloudのアラート設計で整理できます。
監視結果は、障害対応だけでなく容量計画にも利用します。日次の最大値、週次の傾向、月次の増加率を残しておくと、キャパシティ変更の判断を説明しやすくなります。
SAP HANA database explorerとの使い分け
SAP HANA Cloud Centralはインスタンスのライフサイクルやサービス状態を確認する場所であり、SQL開発やデータベースオブジェクトの操作を主目的とするツールではありません。SQLの実行、カタログの参照、データベースユーザーによる開発作業にはSAP HANA database explorerを使います。
SAP HANA database explorerでは、データベースに接続し、SQLコンソールから文を実行できます。接続できない場合は、まずSAP HANA Cloud Centralでインスタンスが稼働しているか、接続情報とネットワーク設定が正しいかを確認します。そのうえで、ユーザーのパスワード、証明書、割り当てられた権限を確認します。
SQLコンソールや接続設定の詳細は、SAP HANA database explorerの使い方で確認できます。Centralで状態を確認し、database explorerでデータベース内部を調べるという役割分担にすると、原因調査の順序が明確になります。
監査ポリシーを管理する場合も、SAP HANA Cloud Centralのセキュリティ設定画面に入力するのではなく、SAP HANA database explorerのSQLコンソールからSQL文を実行します。たとえば次のように、CREATE AUDIT POLICYでは監査ステータスを1つ指定し、その後にアクションリストとLEVELを指定します。
CREATE AUDIT POLICY connect_audit
AUDITING ALL CONNECT
LEVEL INFO;
運用中のポリシーを変更するときは、要件と承認を確認したうえでALTER AUDIT POLICYを使います。監査対象、成功・失敗の扱い、保持や確認の手順を文書化し、不要な監査ログの増加にも注意します。
ユーザーと権限を管理する
SAP HANA Cloud Centralへのアクセス権と、データベース内のユーザー権限は別に管理します。前者はBTPやサービス管理に関する権限、後者はデータベース接続、スキーマ、オブジェクト、監査などに関する権限です。
管理者権限を全員に付与せず、業務上必要な操作に限定します。インスタンスの開始や停止ができる担当者、SQLを実行する担当者、監視を確認する担当者を分ける場合は、それぞれの責任範囲と緊急時の代替担当者を定義します。
ユーザーの追加や権限変更では、申請者、承認者、付与した権限、付与日、見直し日を記録します。退職や異動、プロジェクト終了時には、BTP側とデータベース側の両方で不要なアクセスが残っていないかを確認します。
開発者がSQLを実行できることと、本番インスタンスを停止できることは別の権限です。この区別を運用手順とロール設計に反映すると、誤操作のリスクを抑えられます。
トラブルシューティングの順番
SAP HANA Cloudに接続できない、処理が遅い、インスタンスが利用できないといった問題では、次の順番で確認すると切り分けやすくなります。
- SAP HANA Cloud Centralで対象インスタンスとステータスを確認します。
- 直前に行われた開始、停止、サイズ変更、設定変更を確認します。
- ネットワーク経路、許可リスト、証明書、接続先ホストとポートを確認します。
- SAP HANA database explorerで接続テストとSQL実行を行います。
- メモリ、CPU、ストレージ、接続数、長時間実行SQLを確認します。
- アプリケーションログ、監視通知、変更記録を時系列で照合します。
接続できないときに、いきなりユーザー権限だけを変更するのは避けます。インスタンス停止、誤ったリージョン、ネットワーク制限、証明書期限切れなど、権限以外の原因もあります。反対に、SQLは実行できるが特定のスキーマだけ参照できない場合は、データベース内の権限を確認します。
日常運用のチェックリスト
日常運用では、次の確認を定期的に実施します。
- インスタンスの状態と対象環境に誤りがないか
- メモリ、ストレージ、CPU、接続数に急な変化がないか
- 重要なアラートが未対応のまま残っていないか
- 長時間実行SQLや失敗したジョブがないか
- ユーザーと権限に不要な付与がないか
- 証明書や接続情報の有効期限が近づいていないか
- 変更、停止、サイズ変更の記録が残っているか
- 監査ログを確認する担当者と確認頻度が決まっているか
週次や月次のレビューでは、監視値の傾向と容量計画を見直します。運用担当者が交代しても同じ判断ができるように、画面上の確認項目だけでなく、異常時の連絡先、承認者、復旧手順、エスカレーション条件も記録します。
まとめ
SAP HANA Cloud Centralの使い方を理解する要点は、インスタンスの状態とライフサイクルをCentralで管理し、データベース内部のSQL操作をSAP HANA database explorerで行うことです。容量やサービスプランはワークロードと将来の増加を基準に選び、elastic compute nodeは読み取り用途に限定して評価します。
また、監視ではメトリクスを業務影響と結び付け、権限ではBTP側とデータベース側を分けて管理します。起動と停止、アラート、監査、接続確認の手順を文書化しておけば、日常運用と障害対応の両方を安定させられます。